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最近、ニュース等で報道されているように、一般家庭を標的とした「侵入犯罪」は、近年、荒っぽい手口が目立ってきています。こっそりと周囲に気づかれないように行うのではなく、住人の在宅にかかわらず、複数の犯人がいっせいに窓などを壊して押し入る、宅配業者や点検員などを装って侵入し、現金や貴重品を奪うなど、巧妙で凶悪な手口の犯行が増加傾向にあります。
実際、空き巣などの「住宅対象の侵入窃盗」は2004年以降、減少が続いていました。
しかし、凶器で住人を脅し、金品を奪う「住宅対象の侵入強盗」は、2005年以降、減少傾向が続いていたものの、2022年に増加に転じています。さらに、犯行の手口が巧妙化・凶悪化していることから、従来の防犯対策をさらに強化していくことが必要とされているのです。
効果的な侵入犯罪対策を講じるには犯罪予防の基本は、様々な犯行手口の特徴を理解することから始まります。 ここでは「住居への侵入窃盗」に焦点を当て、 代表的な侵入方法とその特徴を学び、 それらの知識を実践的な防犯対策に生かしていきます。
それでは、侵入者はどこから、どのような方法で侵入しているのでしょうか。
警察庁が発表している「侵入窃盗の侵入口」(2023年)のデータによると、一戸建て住宅やマンションなどの共同住宅では、いずれの住宅形態でも、「窓」と「玄関」からの侵入が全体の7割以上を占めていることがわかります。
また、警察庁が公表している「侵入窃盗の侵入手口」(2023年)のデータを見ると、どの住宅形態でも、空き巣など侵入窃盗のほとんどが、鍵のかかっていない箇所から侵入していることが明らかになっています(表の無締り)。
いくら頑丈な建物部品を取り付けても、鍵をかけなければ意味がありません。
「ちょっとの間だから大丈夫」と玄関などの鍵をかけずにごみ出しや洗濯物を干しに行くことがないよう、短時間の外出でも必ず施錠する習慣をつけることが肝心です。
無締りの次に多いのが「ガラス破り」による被害となっています。不在時は雨戸を閉める、窓に補助錠をつける、窓ガラス全面に防犯フィルムを貼るなどの対策が有効でしょう。 4階建て以上の共同住宅では「合い鍵」使用の侵入も多くなっています。合い鍵を玄関周辺や郵便受けなどに隠しても、侵入者に見抜かれてしまいます。合い鍵は絶対に家の外に置かないようにしましょう。
侵入手口ランキング(2023年) | 1位 | 2位 | 3位 |
一戸建て住宅 | 無締り (6,250件) | ガラス破り (4,833件) | 合い鍵 (347件) |
共同住宅 (3階建て以下) | 無締り (1,602件) | ガラス破り (594件) | 合い鍵 (432件) |
共同住宅 (4階建て以上) | 無締り (697件) | 合い鍵 (338件) | ガラス破り (171件) |
では、どのような侵入の手口があるのでしょうか。代表的な手口をいくつか紹介します。
ベランダなどの窓ガラスを割って、割れた部分から手を入れて解錠する手口です。
普通のガラスなら数秒で解錠されます。防犯に効果的と思われがちな網入りガラスは、防火用として開発されたもので、侵入防止効果はありません。
また、クレセント錠(窓の内側にある施錠装置)や補助錠の周辺のガラスのみに 防犯フィルムを施工しても、 想定外の場所が破壊される危険性があるため、 効果的な防犯対策としては不十分です。
防犯フィルムを貼る際は窓ガラス全面に貼ることが重要です。
ドアと壁の隙間にバールなどの工具を差し込み、てこの原理で無理やりドア錠を壊して開ける手口です。乱暴な手口ですが、一般的なドアや錠なら短時間で破壊されてしまいます。
ピックと呼ばれる金属製の特殊な道具を鍵穴に差し込み、短時間でドア錠を開けてしまう手口です。ピッキング対応の錠でなければ、1分もかからずに解錠され、屋内に侵入されてしまいます。
ドアに小さな穴を開け、 室内側の施錠・解錠用のつまみ(サムターン)を 外部から不正に操作して侵入する手法です。
住宅への侵入犯罪は、自身と大切な家族の生命・財産を守るためには、 個人個人が防犯に対する意識を高く持ち、適切な防犯知識を身につけることが 肝要だと言えます。
そして、身近な環境から地域社会全体へと関心の幅を広げ、 実践的な防犯活動を行動に移すことが必要とされているのです。 防犯対策を見つめ直すことから、まず始めてみるのはいかがでしょうか。
ここで紹介する対策は一部にすぎません。警察庁の防犯サイト『住まいる防犯110番』などを参考に、地域や生活スタイル、住まいの状況に合わせた対策を講じていきましょう。
自主防犯の具体的な取り組みをご説明いたします。
基本行動を日々の生活に取り入れ、 継続的に実践することが重要です。また、110番通報については、 不審な状況や危険を察知した際は、迷うことなく即座に実行してください。
空き巣や強盗などの侵入者は、狙う地域や家の下見を事前に行うことが多いとされています。
侵入犯は、住人の生活パターンだけでなく、地域の特性や建物の構造など、様々な要素を入念に調査してから行動を起こします。 犯罪者は「住民同士の絆が強く、コミュニティの結束力が高い地域」を避ける傾向が顕著です。事前の下見では、人の往来の頻度や、住民間の挨拶の習慣といった「地域特性」も重要な判断材料となっています。
さらに、ゴミ出しルールが守られていない地域は、住民の地域への帰属意識の希薄さを示すシグナルとして、侵入者に隙を与える要因となっているようです。
このことから、地域のゴミ収集ルールの遵守や、近隣との良好な関係づくりの実践が、防犯力の高い地域社会の形成につながっていくのです。
施錠の確認を徹底するだけでも住居への不法侵入を防ぐ一定の効果は期待できますが、それのみでは十分とは言えない状況があります。
犯罪者は、ピッキングやサムターン操作による解錠だけでなく、玄関扉そのものを破壊して侵入を試みるケースも報告されています。こうした粗暴な手口から住居を守るためには、CP認定部品(侵入に対する耐性が高い建材)を活用して出入口や窓の防御性能を高めることに加え、防犯カメラやセンサー付き照明を導入するなど、設備面での防犯強化も重要な対策となります。
建物侵入に関して、「侵入に5分以上を要する場合、およそ7割の侵入者が断念する」というデータが示されています。
このことから、建材の防犯性能を評価する重要な基準として「5分間にわたり意図的な破壊行為に耐える能力」が設定されています。この破壊への耐久時間は「抵抗時間」として定義され、各建材製品において規定の試験により検証が行われ、5分以上の抵抗時間が確認された製品が「防犯性能の高い建物部品(CP部品)」として認証され、専用の目録に掲載されています。
CP部品の認定範囲は、玄関扉、錠前、窓枠、ガラス素材、防犯フィルム、雨戸、格子、シャッターなど、全17カテゴリー3,485製品(2024年11月18日時点)に及びます。ただし、これらCP部品は5分以上の抵抗性が実証されているものの、侵入を完全に防止できるわけではないことに留意が必要です。
これらのCP認定製品には、統一の識別マークである「CPマーク」の表示が許可されています。このマークは、防犯性能試験に適合し、高い防犯性能を有する建材として公認された製品のみが使用を認められる、選定時の重要な指標となるものです。
防犯対策がなされている家だと分かりやすくし、「この家は侵入しにくい」と思わせることも防犯の一つの方法です。
侵入者は犯行前に下見を行うことが多いため、狙われにくく、侵入されにくい住まいになっていることが防犯につながります。
戸建住宅の防犯対策
たとえば、敷地への自由な出入りが可能な開放的な住宅では、門扉の設置やインターホンの導入により、敷地内への無断立ち入りを防止する対策が有効です。
また、窓の前に生い茂った植栽は、住宅周辺の視界を遮る要因となっています。視界が遮られた空間は外部からの死角を生み出し、侵入者の隠れ場所や侵入時の遮蔽物として悪用される危険性があります。
このため、敷地内の見通しを確保し、不審者が潜伏できない環境を維持するために、定期的な植栽の剪定管理が欠かせません。
さらに、物置や室外機などの設備は、2階への侵入用の足場として利用されないよう、その配置に留意が必要です。また、庭園や空きスペースには、人の動きを音で察知できる砂利などを敷設することも効果的な対策となります。
集合住宅の防犯対策
敷地の境界に塀や柵、垣根などが設けられていない集合住宅の場合はどのような状況でしょうか?
集合住宅を選ぶ際は、これらの境界設備の有無と特徴を慎重に確認することが重要です。境界設備が存在していても、視界を阻害するものや、容易に越えられる構造、窓やベランダへの足掛かりとなり得る配置では、本来の防犯機能を果たせません。
不法侵入の足場として利用されないよう、適切な配置と高さが考慮され、縦格子フェンスなど乗り越えにくい設計が採用されていることが理想的です。
なお、防犯に配慮した構造設備を備えたマンションや一戸建て住宅は、防犯優良住宅として認定・登録される制度が整備されています。この防犯優良住宅認定制度の詳細については、公益社団法人日本防犯設備協会が運営する「防犯優良住宅認定制度のご紹介」のページで包括的に解説されています。
近年、住宅を狙った侵入窃盗事件が全国的に増加傾向にあり、2023年の被害件数は前年比11.3%増の17,469件に上ります。1日あたり約48件もの侵入犯罪が発生しているのです。
自宅と家族を守るためには、まず侵入犯の手口や狙われやすい住宅の特徴を理解し、適切な防犯対策を講じることが重要です。ここでは、侵入犯罪の実態と効果的な防犯対策について解説します。
侵入犯罪には、空き巣、忍び込み、居空き、押し込み強盗、緊縛強盗などの種類があります。
中でも一戸建て住宅は、共同住宅に比べて狙われやすい傾向にあります。 侵入犯は、以下のような特徴を持つ住宅を狙います。
また、侵入犯は事前の下見で「マーキング」を行い、住人の情報を収集します。
表札や玄関などに不審な印がある場合は、すぐに消したり剥がしたりしましょう。
侵入犯は、電話やメールでのアンケート、SNSの投稿などから、住人の資産状況や在宅時間を調べることもあるため、個人情報の管理には十分注意が必要です。
侵入経路は、一戸建て住宅では窓、共同住宅では表出入り口が最も多く、手口としては「無締まり」「ガラス破り」「合い鍵」などが目立ちます。
狙われやすい時間帯は、空き巣は8時〜18時、忍び込みは24時〜14時、居空きは10時〜18時です。
犯罪を防止するには、「侵入を避ける家」にすることが重要です。
防犯4原則である「時間」「光」「音」「地域の目」を押さえて防犯対策を講じると効果が期待できます。
特に「時間」は重要で、警視庁の調査では、侵入に5分以上かかると約7割の侵入者が諦め、10分以上かかるとほとんどの侵入者が諦めるという結果が出ています。侵入口として狙われやすい窓や玄関のセキュリティを高めることが有効です。
また、家の周りを明るくしたり、侵入時に大きな音がしたりするようにすることで、侵入者に犯行をあきらめさせる効果が期待できます。地域住民同士の連携も、犯罪抑止力につながります。
防犯4原則を踏まえた上で、自宅のセキュリティを強化するおすすめの防犯対策を紹介します。
防犯対策 | 防犯強度 | 費用 |
クレセント錠を強化する | ★★☆☆☆ | 6,000円〜 |
補助錠を取り付ける | ★★☆☆☆ | 8,600円〜1.3万円 |
窓ガラスフィルムを貼る | ★★★☆☆ | 腰高窓:5,000円〜6,000円 掃き出し窓:6,000円〜9,000円 |
二重窓にする | ★★★★☆ | 5万円〜 |
格子・シャッターを取り付ける | ★★★★★ | 面格子:1.3万円〜3.8万円程度窓:5.8万円〜20.8万円程度 |
防犯ガラスに交換する | ★★★★★ | 4.5万円〜(150cmまでの中窓) |
防犯対策 | 防犯強度 | 費用 |
防犯性の高い鍵と交換する | ★★★★☆ | 5万円前後 |
補助錠を取り付ける | ★★★★☆ | 1万円〜5.8万円程度 |
人感センサー照明を設置する | ★★☆☆☆ | 1万円〜1.2万円程度 |
防犯性能の高い玄関ドアと交換する | ★★★★★ | 10万円程度 |
テレビ付きインターホンを設置する | ★★☆☆☆ | 1.9万円〜8.8万円程度 |
ガードプレートを取り付ける | ★★★☆☆ | 6,500円〜1.8万円程度 |
サムターン回し防止カバーを取り付ける | ★★☆☆☆ | 400円程度 |
ドアスコープカバーを取り付ける | ★★☆☆☆ | 400円〜1,000円程度 |
これらの対策を組み合わせることで、侵入犯罪のリスクを大幅に減らすことができます。
また、日頃から近隣住民とのコミュニケーションを大切にし、地域の防犯力を高めることも重要です。一人ひとりの防犯意識が、安全で安心な暮らしにつながるのです。
近年増加する住宅侵入犯罪から家族と財産を守るには、私たち一人ひとりが防犯意識を高め、適切な対策を講じることが重要です。 侵入犯は、脆弱な住宅を狙い、事前の下見で住人の情報を収集します。
侵入を防ぐには、「防犯4原則」に基づき、窓や玄関のセキュリティ強化、近隣との連携など、多角的なアプローチが効果的でしょう。
正しい知識を身につけ、一人ひとりができる防犯対策を実践することが、安全で安心な暮らしと、犯罪のない社会づくりにつながるのです。